ランディングページ(LP)は、主にユーザーがWebサイトに初めて訪れた際に最初に目にする、まさに「着地」するページです。その役割は、ユーザーに対して企業や製品、サービスの魅力を効果的に伝え、特定のアクション(製品の購入、メールアドレスの登録、問い合わせなど)へと導くことにあります。それは単に製品やサービスを紹介するだけでなく、ユーザーと企業との良好な関係構築をデザインすること、とも言えます。
現代のWebマーケティングを大雑把に要約すると「SEOや広告によって人(PV)数を集め、LPによってCV(コンバージョン)率を高めて、CV数を最大化する」につきます。本稿ではこの「高いCV率をもつLP」を制作するための手順を解説します。
上記のようなLPに期待される役割を成立させるためには様々な情報が必要になります。その中でも特に「絶対に」必要なのが下記の5つ。こちらが欠けていると形だけはそれっぽいものが出来たとしても、「刺さる」LPを作ることはできません。
「刺さる」LPを作るためにWebディレクターがまずやるべきミッションは、クライアントからのヒアリングの中で、この重要な5つの情報を過不足なく手に入れることから始まるのです。
コンバージョン(CV)はLPの最終目標です。CVがないLPはそもそも作る意味すらありません。時間とお金をかけてわざわざLPを作るのですから、ユーザーに「何をしてもらいたいのか」を明確にしましょう。
一般的な営利組織であれば、大まかにKGIとして「売り上げを〇〇円増やす」があり、このKGIを達成するために「商品販売数を〇〇個増やす」とか「営業とユーザーの接点を〇〇回増やす」などといったKPIが設定されている、はずです。
さらにこのKPIを達成するために「商品やサービスの購入」、「問い合わせ」、「メールマガジンの登録」、「資料請求」などのCVを獲得するためのLPを用意する、というのが本来の流れになります。
また、CVを定義する際には具体的な数値目標(CVレート)も設定しておきましょう。これにより、LPがうまく機能しているか、改善が必要なのかを判断することができます。
当たり前のようですが、提供するモノやサービスの特徴を知ることは重要です。人は自分が知っている以上のことを他人に伝えることはできません。「刺さる」LPを作りたいのであれば、提供する商材の「良いところ」・「良い理由」を誰よりも知っていなければならないのです。
なので、まず最初に、具体的な商材の特徴をできるだけリストアップしましょう。例えば、製品の耐久性や性能、サービスの手厚さや信頼性や価格など、他の競合と比較して優れている点を明確にします。
次に、これらの特徴がなぜ重要で、どのようにユーザーの問題を解決するのかを考えます。この過程で生まれた単語や文章などのアイデアがLPを構成するキャッチコピーの元になります。このキャッチコピーの出来(ユーザーが素直に受け入れられるかどうか)がLPの成果を左右することになるので、できる限り絞り出してください。
ターゲットユーザーの「ペルソナ」とは、「ターゲットとなる顧客を仮想的に表現した人物像」のことです。顧客の年齢、性別、職業、趣味、ライフスタイル、価値観、課題を仮定することで、ターゲットユーザーの志向をより具体的に深く理解し、効果的なマーケティング施策を行うことができます。
「所詮仮定でしょ」と、LPが「刺さって欲しい」相手を明確にしておかないと、どういった人向けにどういった表現で語りかけていけばいいのかが定まらず、「誰にも刺さらない」ぼんやりとしたLPになってしまいがちです。
同じ商品を提案するにしても、ペルソナが違えば訴求するべきポイントも違ってくるもので、そうなると当然LP内の「コピー」・「ビジュアル」などの表現の方向性も変わってきます。この方向性を、一緒にLPを作る制作チームの人間と共有するためにも、精度の高いペルソナ設定をしておきたいものです。
「適切なペルソナ」が設定できると、「より正確なインサイト」が把握できるようになります。インサイトとは、ユーザーの深層心理やニーズ、欲求を観察・解析し抽出した情報のことで、ターゲットとなるユーザーの行動や反応を観察し、そこから得られる客観的なデータ(ユーザーの行動パターンや反応)と主観的な情報(ユーザーの感想や意見)を組み合わせて導き出されます。
そして「より正確なインサイト」と「提供するサービス・モノの特徴」を知ると、ユーザーに対してサービス・モノをどう訴求すべきかが明確になります。「トレンド訴求」「限定訴求」「ベネフィット訴求」「逃避訴求」「価格訴求」「ネガティブ訴求」「威光訴求」「品質・機能訴求」などなど、訴求すべき軸は幾つか種類がありますが、全て訴求の仕方が変わってきます。
これを「適切なペルソナ」の「より正確なインサイト」に合わせて選択・活用することで、目標とするユーザーにとって「刺さりやすい」LPを作ることができるのです。
そして最後に訴求軸に則ったトークスクリプトを用意します。このトークスクリプトはランディングページが何を訴え、どのようなメッセージをどのような順番で伝え、最終的にユーザーがCVに自然と導かれるというステップ全体をストーリーとして組み立てたものです。
例えば、訴求軸が「短期間で効果が出る」という「ベネフィットの訴求」であれば、トークスクリプトは「ユーザーが抱える問題を明らかにし→提供できる解決策を提示→短期間での効果が見込めるというベネフィットの詳細を伝え→実際の成果事例を挙げて→ユーザーへの特別な提案をする」といった流れになるでしょう。
訴求軸に則ったトークスクリプトを用意することで、ユーザーに対して強力なメッセージを伝え、説得力を持たせることが可能になり、「刺さる」LPを作ることができるようになるのです。
ここまで情報が揃えば、あとはトークスクリプトに沿って情報を配置していけば「刺さる」LPの構成案(設計図)が完成する、はずです。が、構成案を作成する際にも気をつけるべきポイントがいくつか存在します。
トークスクリプトの中身によっては順番は前後しますが、いずれも必要不可欠な要素です。細かい話もありますが、クリエイティブの魂は細部に宿るモノですのでぜひ参考にしてください。
ランディングページに訪れたユーザーが最初に目にする部分、それが「ファーストビュー(FV)」です。このFVがユーザーの興味・関心を引き、そのままページを離れてしまうか、さらに継続してページを閲覧するのかを大きく左右します。
効果的な「刺さる」FVを作るキモは、「瞬間的に視覚に訴えかける魅力的な画像」、「サービス・モノの魅力を簡潔に表すキャッチコピー」、「明確なコールトゥアクション(CTA)を設置する」の3点。
ユーザーがLPに初めて訪れた際、瞬間的に「何が提供され、どういった行動を求められているのか」を理解できるようなFV作りを心掛けましょう。
FVは言葉の通り第一印象を左右するパートです。人間の印象は視覚的な情報に強く左右されるため、魅力的なビジュアル(写真やイラストなど)を配置することで、より強い興味や関心を引き出すことが可能になります。
例えば「提供するサービス・モノを実際に使用して笑顔になっている人間」のビジュアルがあれば、ユーザーは「この商品を使用すると良いことがあるのかな」と考えて、より深くLPの内容に引き込まれていくことでしょう。
さらに、そのビジュアルにストレートかつインパクトのあるキャッチコピーを添えることで、ビジュアルだけでは伝えられない具体的なメリットをユーザーに想起させることができます。
訴求軸やペルソナによって表現は変わりますが、そのLPが想定している「ユーザーが一番欲しい言葉でベネフィット(利益)を提示する」というのがキャッチコピーの役目です。
ビジュアルとキャッチコピーでユーザーが得られるベネフィットを提示できたら、そのベネフィットを「どうしたら享受できるのか」という具体的なアクションを提示するため、コールトゥアクション(CTA)を設置します。
CTAの内容は、「無料登録」、「試用申し込み」、「商品の購入」、「資料請求」などなど、LPの目的によって変化しますが、ユーザーにとって手軽にできるアクションを設定してください。これにより、ユーザーは具体的な行動を起こしやすくなります。
当然のことですが、提供する商材をユーザーに紹介することを忘れてはいけません。LPは言わば商材のプレゼンをするためのサイトでもあるので、ユーザーの知らない商材の特徴を明確に伝えることが求められます。
LPに限った話でもありませんが、そもそも一部の興味・好奇心を自発的に持ってくれるユーザー以外は、サイト上に存在する情報を舐めまわすように吟味してくれるわけではありません。
提案する商材に対してフラットな感情しか持っていないユーザーは、「このLPの提案する商材は自分に関係のないものだ」と感じればすぐに離脱していってしまいます。
そういったユーザーにも商材の良さを伝えるためには「商材の持つユーザーにとってのベネフィット」を離脱するまでに伝えきらなくてはなりません。そのためにも「提案する商材を使用することによってユーザーにこんな明るい未来(ベネフィット)が訪れます」ということを瞬間的に分かりやすく提示することが求められます。
提供する商材の特徴を紹介する際には、単にその機能を列挙するだけでなく、それがユーザーにどのようなベネフィットをもたらすのか、またはそれがユーザーの抱える問題をどのように解決するのかを具体的に示すことが重要です。これにより、ユーザーは商品やサービスの価値を直感的に理解することができます。
例えば、新型の掃除機を紹介する場合、「強力な吸引力」という特徴だけを伝えるのではなく、「強力な吸引力によって一度でゴミをしっかり吸い取り、掃除の手間を大幅に減らすことができます」と表現すれば、ユーザーは自身の問題(掃除の手間)が解決される具体的なイメージを持つことができます。
また、その特徴が他の競合商材とどのように違うのか、その差別化ポイントを明確に示すことも効果的です。
実際に手で触れられない商材の特徴を画像や言葉だけで説明することはとても難しいことです。なのでエビデンスや専門知識を用いて、提供する商材の持つベネフィットのイメージを補強しましょう。
エビデンスとは具体的には、製品の効果を証明する統計データや第三者による評価、成果事例などです。一方、専門知識とは、その製品やサービスの背後にある科学的根拠や技術的詳細を示すもので、専門的な視点からその信頼性を証明します。
ここで重要なのは、エビデンスや専門知識をただ列挙するだけではなく、それらがユーザーの問題解決や欲求達成にどのように役立つのかを具体的に示すことです。具体的な解説や事例を交えながら、製品の特長やメリットをユーザーにとって理解しやすい形で伝えましょう。
また、画像や動画を活用して、視覚的にも理解しやすいプレゼンテーションを心掛けることも重要です。特に、製品の使用方法や効果をダイレクトに視覚化することで、ユーザーの理解を深めることができます。情報が多い場合は、インフォグラフィックなどを利用して分かりやすく整理すると良いでしょう。
この工程を通じて、ユーザーは提供するモノ・サービスの特徴を深く理解し、その価値を認識することができます。それにより、ユーザーは自身のニーズと提供するモノ・サービスの間に強い関連性を感じ、コンバージョンへと前進する可能性が高まるのです。
モノ・サービス自体のもつベネフィットを具体的なエビデンスなどによりユーザーに伝えること以外にも、その商材を提供するブランド・人の持つ権威性を利用して商材の「ユーザーから見た価値」を高めることもできます。
同じ情報を同じように伝えていたとしても、提供者の信頼性や権威性によって、ユーザーの受け取る印象は変わるものです。なので、提供者の信頼性や権威性をアピールすることでユーザーが安心して商材の価値を受け入れやすくすることが可能になります。
例えば、業界で広く認知された専門家からの推薦やテスト結果、あるいは既に製品を使用して満足した顧客からの評価・感想、長い年月顧客からの信頼を受けてきていること、などを提示することにより、同じ商品を扱っていてもユーザーにより高く価値を感じてもらうことができるのです。
活用例や事例紹介は、ユーザーにとって具体的なイメージを描きやすく、自己投影してもらうことで、その商品やサービスの魅力をより深く理解してもらえる手段です。そのため、具体的な数値や結果を使って、そのモノ・サービスがどれほど優れているかを示すことが重要となります。
どのようなユーザーがどのような状況でそのモノ・サービスを活用し、どのようなメリットを得たのかを詳しく紹介することにより「自分も同じように利益を得ることができるのではないか」とユーザーに考えさせることができます。これにより、ユーザーの購買意欲を高め、CV(コンバージョン)につなげやすくなるのです。
ランディングページにおいて、ユーザーの「納得」を追及することは非常に重要です。これは、ユーザーが提供されるサービスや製品に対して信頼感を持ち、最終的に行動に移すためのトリガーとなるものだからです。
ユーザーが「納得」しなければ、どんなに言葉を尽くしてもCVには至ってくれませんし、逆に情報量が少なくても「納得」さえ与えられればユーザーは自ずからCVに向かってくれます。
お客様の声や評価を活用することで、ユーザーに納得感を与えることができます。しかし、ただ評価を掲載するだけでなく、それがどのようにユーザーの課題を解決しているのか、またはどのようにユーザーの生活を豊かにしているのかを具体的に示すことが重要です。そのためには、以下のような要素を考慮する必要があります。
2評価者の信頼性:評価者が誰であるかを示すことで、評価の信頼性を高めることができます。例えば、評価者がその分野の専門家であったり、その商品やサービスを長期間使用してきたユーザーである場合、その評価はより信頼性が高まります。
3ストーリーテリング:評価をただ掲載するのではなく、評価者がどのような課題を持っていて、その商品やサービスがどのようにそれを解決したのかというストーリーを伝えることで、ユーザーに納得感を与えることができます。
これらの要素を考慮し、ユーザーに納得感を与えてCVへの行動を促すランディングページを作成していくことが重要です。
商品の購入において最も大事な要素の一つは「価格」です。しかしLP内でユーザーに商品やサービスの「価格」を提示するだけでは不十分です。ユーザーが求めているのは、よりお得な取引であり、商品の「価値」がわからないまま「価格」を伝えられてもそこに何の意味もありません。
例えば、単に「〇〇円の商品です」と伝えるだけではなく、具体的な利点や特長(品質、使い勝手、デザイン、節約できる時間や労力など)を明確に提示した上で、「こういう理由で〇〇円以上の価値を手に入れられるのです」と提案してみましょう。
ユーザーからすると「〇〇円の価格を支払う」だけで「〇〇円以上の価値が手に入る」ので、商品を購入することに何の心理的抵抗も感じなくなります。このようにユーザーにとって「価格以上の価値がある」と感じられる状態が作り出せれば、もう他にやることはないと言っても過言ではありません。
LPを読むユーザーはとても慎重なもので、提供側がどれだけ情報を提示したとしても「他にもアレはどうだろう?」と疑問や懸念を持つものです。これを先読みして、FAQ(Frequently Asked Questions)の形式で解決策を示すことで、ユーザーに納得感を提供します。
例えば、サービス利用に際してユーザーが抱く可能性のある疑問「サービスの料金はどの程度か?」「初めてでも利用しやすいのか?」などの一般的な疑問に対し、明確な回答を提供することで、ユーザーの不安を払拭し、納得感を生むことができます。
さらに、一般的な疑問だけでなく「他の同様のサービスと何が違うのか?」「なぜこのサービスが最適なのか?」というような少し深掘りした疑問もサポートしましょう。これにより、ユーザーは自身の判断を補強し、自信を持って行動に移すことが可能になります。
また、FAQはサービスの強みや独自性を強調する絶好の機会でもあります。単なる疑問解消ツールとしてではなく、サービスの魅力を伝えるツールとしても活用していきましょう。
CTA(コールトゥアクション)は、ランディングページ終盤の最重要パートです。ユーザーがあなたの提供するサービスや商品について理解し、関心を持ったところで、最後に畳み掛けるようにコンバージョンにつなげましょう。ここで成すべきは、「行動」につながる「説得」です。
まず、これまでのページで伝えたメッセージをまとめ、ユーザーが求める価値を明確にします。そして、ユーザーにアクションを促す強いメッセージを伝え、最終的なCVへ導きます。その際に注意すべきポイントは、
CTAはLP全体の訴求内容と連動させることが肝心です。提供するモノ・サービスの特性やユーザーのニーズに合わせた訴求を行い、それに対応する形でCTAを設定することで、ユーザーの行動を効果的に誘導することが可能になります。
LPというものは営業マンがユーザーに対して商品を売るときに使用するトークスクリプトそのものです。なので、自分の扱う商材を良く知り(強調するべき特徴や価値)、対面するユーザー(属性や本質的に求めている価値)に合わせたストーリーで、納得してもらってCVに誘導することが肝要です。
この試みにおいて絶対の成功も失敗も存在はしていません。ただどれだけ深く要点を考察してユーザーに寄り添えたかが、CV率という結果として顕われる、というだけです。ですから、たった一つLPを作って、その結果に一喜一憂して終わる、のではなく「こうするともっと良くなるのでは?」という仮説をもって継続的に研ぎ澄ませていくことを考えるようにしてください。ちなみに業界別CV率の目安としてはこんなデータがあるようですのでご参考までに。
この記事は「刺さるランディングページ(LP)の作り方・手順を徹底解説【Webディレクター編】」ということで、LP≒トークスクリプトの構築の仕方について記述してきましたが、これの後に続く「どういう装いの営業マンが使用するのか」=「LPをどのようにデザインに落とし込んでいくのか」というパートも「刺さるLP制作」には重要になってきます。こちらはまた別記事にてご紹介していきますので併せてご参照ください。