実践で使える!マーケティング心理学を理解して売上アップにつなげる方法

「良い商品を作ったはずなのに、なぜか売れない」 「広告のクリック率やLPのコンバージョン率が伸び悩んでいる」
マーケティング担当者や経営者の方であれば、こうした壁にぶつかった経験が一度はあるのではないでしょうか。データ分析やロジカルな施策を行っても成果が変わらないとき、見落とされている最大の要因。それは「人間の心理(不合理な行動原理)」かもしれません。
実は、人間の意思決定の9割以上は「無意識」に行われていると言われています。つまり、論理的な説得だけでは、顧客の心を動かし行動(購入や申し込み)を促すことは難しいのです。
そこで強力な武器となるのが「行動心理学(行動経済学)」です。 人が無意識に感じてしまう心理効果をマーケティング施策に組み込むことで、ユーザーの迷いを断ち切り、自然な形で成約へと導くことが可能になります。
この記事では、数ある心理効果の中からマーケティング現場ですぐに使える重要な「行動心理学の法則」を15個厳選しました。単なる用語解説ではなく、以下の4つのフェーズに分類して具体的な活用事例とともに解説します。
【信頼】 警戒心を解き安心させる
【購入】 迷いを断ち切りCVさせる
【リピート】 ファン化してLTVを高める
心理学という「科学的根拠」を味方につければ、感覚頼みの運用から脱却できます。ぜひ本記事を参考に、あなたのマーケティング施策の効果を劇的にアップさせてください。
- 【集客・興味付け】クリック率と開封率を高める心理学4選
- 【信頼・安心感】ユーザーの警戒心を解く心理学3選
- 【購入・決断】迷いを断ち切りCV(成約)させる心理学5選
- 【リピート・ファン化】顧客との関係を深める心理学3選
- 行動心理学をマーケティングに活用する際の3つの注意点
- まとめ:行動心理学を理解してマーケティング施策をレベルアップさせよう
【集客・興味付け】クリック率と開封率を高める心理学4選
カクテルパーティー効果 |「自分に関係がある」と思わせる

■定義:カクテルパーティー効果とは
カクテルパーティー効果(Cocktail Party Effect)とは、騒がしいパーティー会場のような場所でも、自分の名前や興味のある話題だけは自然と耳に入ってくる心理現象のことです。人間の脳が必要な音声情報を無意識に選択・識別する機能(選択的注意)によって起こります。
■なぜ効果があるのか
インターネット上には膨大な情報が溢れており、ユーザーは無意識に情報の9割をスルーしています。しかし、脳の網様体賦活系(RAS)というフィルター機能は「自分にとって重要(名前や悩み)」と判断した情報だけを通過させ、意識に上げます。この本能を利用することで、スルーされる広告を目に留めさせることができます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・ターゲットの具体化: 「誰」の悩みなのかを明確にする。
・呼びかけ: メール件名や広告見出しに「名前」や「属性(〇〇区にお住まいの~)」を入れる。
・問いかけ: 「~にお悩みではありませんか?」と質問形式にする。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(対象が広い)「英語が上達する方法」誰にでも当てはまるため、誰にも刺さらない。
・◎ OK(属性指定)「30代から始める英会話」年代を指定することで、該当者が反応する。
・◎ OK(悩み指定)「部下の育成に悩む課長へ」具体的な悩みと役職で、自分事化させる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
属性ではなく「脳内のキーワード」を狙い撃つ。「30代男性の方へ」と呼びかけるよりも、「最近、腰痛が気になりだした方へ」と呼びかける方が、反応率は圧倒的に高くなります。なぜなら、ユーザーの脳内では「自分の属性(30代)」よりも「現在の悩み(腰痛)」の方が優先順位が高く、常にアンテナを張っている状態だからです。
カリギュラ効果 | 禁止されるほど見たくなる

■定義:カリギュラ効果とは
カリギュラ効果(Caligula Effect)とは、禁止されたり制限されたりすると、かえってその物事への興味や関心が高まり、実行したくなってしまう心理現象のことです。心理的リアクタンス(自由を回復しようとする反発作用)が働きます。
■なぜ効果があるのか
人間は生まれつき「自分の行動を自分で決めたい」という欲求を持っています。「見てはいけない」と禁止されると、自由を制限されたと感じ、反発心から「見る」という行動を選択しようとします。このエネルギーを逆手に取り、クリックや開封への強力な動機づけにします。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・強いフック: 「閲覧注意」「悪用厳禁」などの強い言葉を選ぶ。
・条件付け: 「本気で痩せたい人以外は見ないでください」と対象を絞る。
・情報の隠蔽: モザイクや袋とじ(クリックしないと見えない仕様)を使う。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(普通の勧誘)「ぜひ見てください」押し売り感があり、スルーされやすい。
・◎ OK(限定的禁止)「年収1000万以下の人は見ないで」条件付きで禁止することで、逆説的に興味を引く。
・◎ OK(秘匿性)「業界の裏話を暴露(閲覧注意)」秘密を覗き見たいという好奇心を刺激する。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
ランディングページ(LP)の内容はあくまで真面目に。タイトルで煽ってクリックさせた後、中身が薄いとユーザーは「騙された」と感じて即離脱します。入り口はカリギュラ効果で煽りつつも、中身は有益で誠実な情報を提供し、ギャップで信頼を獲得するのが鉄則です。
ツァイガルニク効果 | 未完成の情報が気になってしまう
■定義:ツァイガルニク効果とは
ツァイガルニク効果(Zeigarnik Effect)とは、達成された課題よりも、達成されていない(中断された)課題のほうを強く記憶し、続きが気になってしまう心理現象のことです。未完了の緊張状態が持続することで起こります。
■なぜ効果があるのか
脳は「完結」を好みます。情報が途中で途切れていると、脳内で情報の空白を埋めようとするストレス(認知的不協和)が生まれ、それを解消するために「続きを見る(クリックする)」という行動を無意識にとってしまいます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・寸止め: 結論の一歩手前で情報を隠す(「続きはWebで」)。
・問いかけ: 記事タイトルを疑問形で終わらせる。
・プログレスバー: 入力フォームなどで「現在 50%完了」と表示する。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(完結)「売上が上がる方法はSEO対策です」タイトルで答えがわかってしまい、クリックされない。
・◎ OK(未完結)「売上が上がるたった1つの方法とは?」答えを隠すことで、確認したい欲求が生まれる。
・◎ OK(物語)「借金地獄から復活した、その逆転劇」ストーリーの結末を知りたくなる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
EFO(フォーム最適化)での活用。問い合わせフォームの上部に「あと2項目で完了です」とステータスを表示しましょう。ツァイガルニク効果により、「あと少しで終わるなら入力しきってしまおう(完了させたい)」という心理が働き、離脱率が下がります。
ハロー効果 | 第一印象が全体の評価を決める

■定義:ハロー効果とは
ハロー効果(Halo Effect / 後光効果)とは、ある対象を評価する際、目立ちやすい特徴(外見や肩書きなど)に引きずられて、他の特徴についての評価まで歪められてしまう心理現象のことです。「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」があります。
■なぜ効果があるのか
人間は相手を評価する際、すべての情報を吟味する余裕がないため、わかりやすい指標(見た目や権威)を使って瞬時に全体を判断しようとします。Webサイトの場合、ファーストビューのデザインが優れていれば、中身のサービス品質まで高いと錯覚させることができます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・ビジュアル強化: プロ品質の写真やデザインを使用する。
・権威付け: 「医師監修」「〇〇賞受賞」などのロゴを目立つ場所に置く。
・有名人の起用: タレントやインフルエンサーをイメージキャラクターにする。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(素人感)フリー素材や崩れたレイアウト…「サービスも雑だろう」とネガティブに判断される。
・◎ OK(プロ感)高画質写真・整った余白…「信頼できる企業だ」とポジティブに判断される。
・◎ OK(権威)モンドセレクション金賞…「品質が良いに違いない」と思い込ませる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
表示速度も「ハロー効果」の一部。どんなにデザインが良くても、サイトの表示が遅いと「技術力がない会社」「ユーザーへの配慮がない」というネガティブ・ハロー効果が働きます。デザインだけでなく、Core Web Vitalsなどの技術的な指標を整えることも重要です。
【信頼・安心感】ユーザーの警戒心を解く心理学3選
ウィンザー効果 | 第三者の声が最も信頼される

■定義:ウィンザー効果とは
ウィンザー効果(Windsor Effect)とは、当事者が発信する情報よりも、利害関係のない第三者が発信した情報のほうが信頼性が高いと感じる心理効果のことです。ミステリー小説の登場人物(ウィンザー伯爵夫人)のセリフに由来します。
■なぜ効果があるのか
売り手からのメッセージには常に「売りたい」というバイアスがかかっていると消費者は考えます。一方、第三者(他の顧客)には商品を褒める義理がないため、その言葉は客観的な真実であると脳が判断しやすくなります。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・口コミの収集: Googleマップやレビューサイトの評価を集める。
・UGC活用: InstagramやX(Twitter)の一般ユーザーの投稿をサイトに埋め込む。
・事例インタビュー: 顧客の実名・顔写真付きの感想を掲載する。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(自画自賛)「当社の製品は最高です」セールストークとして警戒される。
・◎ OK(第三者)「お客様満足度98%」多数の他者が評価している事実を示す。
・◎ OK(口コミ)「『人生が変わった』との声を頂きました」実際のユーザーの言葉として信頼させる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
悪い口コミも隠さない。良い口コミばかりだと「サクラではないか?」と疑われます。少数の悪い口コミがあっても、それに対して誠実に返信している様子を見せることで、「信頼できる企業」という逆転のウィンザー効果が生まれます。
バンドワゴン効果 | 「みんなが選んでいる」安心感
■定義:バンドワゴン効果とは
バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)とは、ある事象を支持する人が多ければ多いほど、その事象への信頼感が増し、自分も同じ選択をしたくなる心理現象のことです。「勝ち馬に乗る」心理とも呼ばれ、社会的証明の一種です。
■なぜ効果があるのか
人間は失敗を恐れるため、判断に迷ったときは「多数派」に属そうとします。「これだけ多くの人が選んでいるなら、大きな間違いはないだろう」という心理的ショートカットが働き、購入の不安が払拭されます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・実績の数値化: 累計販売数、導入社数、会員数を大きく表示する。
・ランキング: 「楽天1位」「Amazonベストセラー」のバッジを貼る。
・カテゴリ明示: 「今、一番売れています」というタグを商品に付ける。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(抽象的)「多くの人に愛されています」根拠が見えず、信用度が低い。
・◎ OK(具体的)「累計導入数 10,000社突破」圧倒的な数を可視化し、安心感を与える。
・◎ OK(順位)「売れ筋ランキング No.1」他の商品よりも優れていることを証明する。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
マイクロ・バンドワゴンを狙う。全世界で1位である必要はありません。「中野区で一番選ばれている」「美容師が選ぶハサミNo.1」のように、ターゲットを絞った中でのNo.1や多数派をアピールすることで、より濃い見込み客に刺さります。
単純接触効果(ザイオンス効果) | 会う回数が増えるほど好きになる
■定義:単純接触効果とは
単純接触効果(Mere Exposure Effect)とは、初めは興味がなかったり警戒していたりした対象でも、繰り返し見たり聞いたりするうちに、次第に好感や親近感を抱くようになる心理現象のことです。提唱者の名前からザイオンス効果とも呼ばれます。
■なぜ効果があるのか
人間の脳は、知らないものに対しては警戒心を抱き、知っているもの(馴染みがあるもの)には安心感を抱くようにできています。接触回数が増えることで「知っている状態」になり、警戒心が解け、好意的な評価へと変化します。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・リターゲティング広告: サイト訪問者に繰り返し広告を表示する。
・SNS更新: 毎日投稿を行い、タイムラインに顔を出す。
・ステップメール: お役立ち情報を定期的に配信し、接触頻度を保つ。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(一発勝負)1回だけの高額な新聞広告…忘れられやすく、親近感も湧かない。
・◎ OK(反復)少額でも長期間のWeb広告…何度もロゴを目にすることで記憶に残る。
・◎ OK(顔出し)SNSやブログでの顔出し…「よく見るあの人」になり、信頼される。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
接触の「質」と「ウザさ」の境界線を知る。単純接触効果には限界があります。短期間に同じ広告を出しすぎると「飽き」や「嫌悪感」に変わります(広告疲労)。クリエイティブ(画像や文言)を定期的に変え、飽きさせずに接触回数を稼ぐ工夫が必要です。
【購入・決断】迷いを断ち切りCV(成約)させる心理学5選
決定回避の法則(ジャムの法則) | 選択肢が多いと選べない

■定義:決定回避の法則とは
決定回避の法則(Paradox of Choice)とは、選択肢が多すぎると、選ぶためのストレス(認知コスト)が増大し、結果として「選ばない(購入しない)」という決定をしてしまう心理現象のことです。有名なジャムの試食実験に由来します。
■なぜ効果があるのか
「選ぶ」という行為は脳のエネルギーを消費します。選択肢が多すぎると比較検討が困難になり、脳は「失敗したくない」という防衛本能から、決断そのものを先送りにしようとします。選択肢をあえて減らすことで、脳の負担を減らし、決断を促すことができます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・プランの厳選: おすすめ商品を3つ程度に絞って提示する。
・レコメンド: 「迷ったらコレ」というイチオシ商品を目立たせる。
・CTAの整理: ランディングページ内の出口(ボタン)を1種類にする。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(多すぎる)20種類のジャムを並列に展示…どれが良いかわからず、離脱する。
・◎ OK(絞り込み)厳選した6種類のみ展示…比較しやすく、購入率が上がる(実験では10倍)。
・◎ OK(ガイド)「店長のおすすめ」タグ…思考停止で選べる選択肢を用意する。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
ECサイトなどでどうしても商品数を減らせない場合は、「絞り込み検索(フィルタリング)」を充実させるか、「用途別」「年代別」などのカテゴリー入り口を設けて、ユーザーが一度に目にする選択肢を減らすUI設計が重要です。
アンカリング効果 |「基準」を作って安く見せる
■定義:アンカリング効果とは
アンカリング効果(Anchoring Effect)とは、最初に提示された数字や情報(アンカー)が基準となり、その後の判断に強い影響を与える心理現象のことです。船の錨(アンカー)を下ろすとそこから動けなくなることに由来します。
■なぜ効果があるのか
商品の適正価格がわからない時、ユーザーは最初に見た価格を「相場」だと認識します。最初に高い価格(アンカー)を見せてから、本来売りたい価格を見せることで、「差額」を「お得感」として認識させることができます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・価格表示: 「通常価格 10,000円」に打ち消し線を入れ、「5,000円」と併記する。
・並び順: 商品一覧の高い順(ハイエンドモデル)から表示する。
・比較: 他社の高い見積もりと比較表を作る。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(単独表記)「価格:5,000円」安いのか高いのか判断できない。
・◎ OK(比較表記)「~~10,000円~~ → 5,000円」1万円が基準になり、5千円が激安に見える。
・◎ OK(松竹梅)「松:3万 竹:1.5万 梅:1万」3万円を見た後だと、1.5万円が手頃に感じる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
二重価格表示の法規制に注意。実態のない「通常価格」を表示して安く見せることは、景品表示法違反(有利誤認)になります。アンカーとして使う価格は、実際に販売実績がある価格や、メーカー希望小売価格など、正当な根拠があるものを使用してください。
損失回避の法則(プロスペクト理論) | 得するより「損したくない」
■定義:損失回避の法則とは
損失回避の法則(Loss Aversion)とは、利益を得る喜びよりも、損失を被る痛みを約2倍〜2.5倍も強く感じるという心理特性のことです。プロスペクト理論の中核となる概念です。
■なぜ効果があるのか
生物としての生存本能により、人間は「持っているものを失う」ことに対して強烈な抵抗感を持ちます。「5000円もらえる」というポジティブな動機よりも、「今買わないと5000円損する」というネガティブな回避動機のほうが、緊急性の高い行動に繋がります。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・期限設定: 「本日限り」「あと1時間」とカウントダウンを表示する。
・在庫表示: 「残り3個」「他のお客様が検討中」と表示する。
・表現変更: 「お得です」ではなく「損します」と言い換える。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(メリット訴求)「早期申し込みで割引あり」 「後でいいか」と先送りされやすい。
・◎ OK(損失訴求)「明日から値上げします」 今の価格(権利)を失いたくない心理が働く。
・◎ OK(機会損失)「ポイント有効期限が迫っています」 ポイントを失う痛みが、買い物の動機になる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
カウントダウンタイマーの実装。LP(ランディングページ)の購入ボタン付近に、「キャンペーン終了まで 02:59:00」といった動くタイマーを設置するのは鉄板の施策です。視覚的に「時間が失われていく様子」を見せることで、CVR(成約率)が劇的に向上します。
おとり効果(デコイ効果) |本命を選ばせる罠

■定義:おとり効果とは
おとり効果(Decoy Effect)とは、明らかに選ばれないような選択肢(おとり)をあえて混ぜることで、売り手が意図する「本命の選択肢」の魅力を相対的に高め、選ばれやすくする心理手法のことです。
■なぜ効果があるのか
2つの選択肢(AとB)だけだと比較が難しい場合でも、Aより明らかに劣る「おとり(C)」が登場すると、脳は「CよりAのほうが圧倒的に良い」と判断しやすくなります(非対称的支配)。この比較のしやすさが、Aを選ぶ正当な理由になります。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・本命の決定: 売りたい商品(例:Mサイズ)を決める。
・おとりの作成: 本命と価格が近く、性能が劣る(または性能は同じで高い)選択肢を作る。
・配置: 松竹梅の「梅」や「松」として配置し、「竹」へ誘導する。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(2択)「Sサイズ:300円 / Lサイズ:700円」安いSサイズに流れやすい。
・◎ OK(おとり有)「S:300円 / M:650円 / L:700円」MとLの価格差が小さいので「Lがお得」に見える。
・◎ OK(高額おとり)「Web制作:30万 / 全部入り:35万」+5万で全部つくなら35万がお得に見える。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
「松竹梅」の真ん中狙い。日本人は極端な選択を避ける傾向(極端の回避性)があります。高機能な「松」、標準の「竹」、廉価な「梅」を用意すると、多くの人が無難な「竹」を選びます。一番売りたい主力商品を「竹」のポジションに置くのがセオリーです。
テンション・リダクション効果 | 決断後のついで買いの魔力

■定義:テンション・リダクション効果とは
テンション・リダクション効果(Tension Reduction Effect)とは、緊張を伴う重大な決断や行動をした直後に、心理的な警戒心が解け、無防備(気が大きくなる)状態になる心理現象のことです。
■なぜ効果があるのか
商品の購入という「決断」は緊張を伴いますが、決済が終わった瞬間にその緊張から解放されます。この安心したタイミングで「これもあると便利ですよ」と提案されると、財布の紐が緩んでいるため、追加購入(クロスセル)への抵抗感が極端に下がります。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・タイミング: カートの決済完了画面(サンクスページ)を活用する。
・関連提案: 本品と関連するオプションや消耗品を勧める。
・特別オファー: 「同時購入なら10%OFF」と背中を押す。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(購入前)商品ページでオプションを強引に勧める…複雑になり、メイン商品の購入自体をやめてしまう。
・◎ OK(購入後)決済完了後に「この商品もおすすめ」…すでに購入を決めているため、追加しやすい。
・◎ OK(セット)「ご一緒にポテトはいかがですか?」…少額の追加提案は、ついで買いされやすい。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
アップセルへの応用。ECサイトだけでなく、BtoBの申し込みフォーム完了画面でも有効です。「資料請求ありがとうございました」の画面で、「無料相談会も開催中ですが予約しますか?」とオファーすると、高い確率で次のステップへ誘導できます。
【リピート・ファン化】顧客との関係を深める心理学3選
返報性の原理 | 「もらいっぱなし」は居心地が悪い

■定義:返報性の原理とは
返報性の原理(Reciprocity)とは、他人から何か施しを受けたり親切にされたりすると、「お返しをしなければ申し訳ない」という義理の感情を抱く心理法則のことです。
■なぜ効果があるのか
人間社会における「貸し借り」のバランスを保とうとする社会的な本能です。ビジネスにおいて、先に相手に価値(情報やサンプル)を提供することで、相手の中に「負債感」が生まれ、商品購入や登録といった行動でお返ししようとする動機が生まれます。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・ギブ・ファースト: 無料で有益な情報(ホワイトペーパー、動画)を提供する。
・無料体験: 1ヶ月無料トライアルや、無料サンプルの配布。
・サプライズ: 商品に手書きのメッセージカードや小さなおまけを同梱する。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(テイク)「まずは会員登録してください」ユーザー側にメリットがなく、行動しない。
・◎ OK(ギブ)「無料でノウハウ資料をプレゼント」先に与えることで、個人情報の提供を促す。
・◎ OK(おまけ)商品に予期せぬお試しセットを同梱…期待値を上回り、リピートや口コミに繋がる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
「譲歩」の返報性(ドア・イン・ザ・フェイス)。最初に大きな要求(本命の商品の購入)をして断られた後、「では、無料のメルマガだけでも」と小さな要求(譲歩)を出すと、「相手が譲ってくれたのだから自分も」と承諾率が上がります。離脱時のポップアップなどで有効です。
一貫性の原理 | 一度決めたら変えたくない
■定義:一貫性の原理とは
一貫性の原理(Consistency Principle)とは、自分の発言、態度、行動を一貫したものにしたい、矛盾したくないという無意識の欲求のことです。小さな承諾を積み重ねて大きな承諾を得る「フット・イン・ザ・ドア」テクニックの基礎となります。
■なぜ効果があるのか
社会的に「一貫性がある人」は信頼され、「言うことがコロコロ変わる人」は信頼されないため、人は無意識に自分の立場を守ろうとします。一度「イエス」と言ったり、小さな行動を起こしたりすると、その後もその行動と矛盾しない選択(購入や継続)をしやすくなります。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・スモールステップ: 最初は「いいね」や「簡単なアンケート」などハードルの低い行動を求める。
・公言: SNSで「目標」や「買ったこと」をシェアさせるキャンペーンを行う。
・継続: 「会員ランク」などで、続けてきたステータスを可視化する
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(高ハードル)いきなり高額商品を売り込む…断られると、その後も「断る」一貫性が働く。
・◎ OK(低ハードル)無料お試しから始める…「申し込んだ自分」との一貫性で、有料移行しやすい。
・◎ OK(アンケート)「健康に関心はありますか?」→YES…肯定した手前、健康食品のオファーを断りにくくなる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
入力フォームの最初に「名前」や「住所」を聞くと離脱されますが、最初に「簡単な選択肢(例:お部屋の悩みは?)」をタップさせると、ユーザーは「回答を始めた」という一貫性を守るため、最後まで入力してくれる確率が高まります。
保有効果 | 自分のものは手放したくない

■定義:保有効果とは
保有効果(Endowment Effect)とは、自分が所有しているもの(または所有していると感じているもの)に対して、客観的な市場価値よりも高い価値を感じ、手放すことに強い抵抗を感じる心理現象のことです。
■なぜ効果があるのか
「損失回避の法則」が所有物に適用された状態です。一度自分の手元に来たものは、愛着が湧き、それを失うことを「損失」と捉えます。物理的な所有だけでなく、サービスの利用権などでも発生します。
■マーケティング施策への導入 3ステップ
・お試し: 「返品保証」「無料トライアル」で、一時的に所有させる。
・カスタマイズ: アプリや画面を自分好みに設定させる(愛着形成)。
・クーポン: 「あなただけのクーポン」を発行し、使う権利を保有させる。
■OK/NG 表現の具体例
・× NG(説明のみ)商品画像を見せるだけ…所有感が湧かず、価値を感じにくい。
・◎ OK(試着・試用)自宅で試着、返品無料…一度手元に置くと、返送するのが惜しくなる。
・◎ OK(保証)30日間全額返金保証…リスクをなくして購入させ、保有効果で継続させる。
■マーケティングのプロが教える「効果最大化のコツ」
タッチデバイスと保有効果。スマホやタブレットで商品を「指で操作する(拡大したり回転させたりする)」行為は、疑似的な「触れる体験」となり、保有効果を高めるという研究があります。ECサイトの画像UI(ユーザーインターフェース)をリッチにすることは、心理学的にも有効です。
行動心理学をマーケティングに活用する際の3つの注意点

行動心理学は強力な武器ですが、使い方を誤るとブランドの信頼を損なう「諸刃の剣」となります。施策を導入する前に、以下の3つのリスクと対策を必ず確認してください。
ターゲットと商材との相性を考える
■解説:心理効果のミスマッチに注意。すべての心理効果が、すべての商材に効くわけではありません。商材の「価格帯」や「ブランドイメージ」によっては、逆効果になることがあります。
■具体例:高級腕時計やラグジュアリーホテルで「アンカリング効果(二重価格)」や「損失回避(タイムセール)」を過度に行うとどうなるでしょうか。「安売りされている=価値が低い」とみなされ、本来のターゲット層である富裕層が離れてしまいます(ヴェブレン効果の阻害)。
■対策:安価な消耗品・衝動買い商材 → 「損失回避」「バンドワゴン」、 高額商品・BtoB商材 → 「ウィンザー効果(信頼)」「ハロー効果(権威)」、この様に商材の属性に依る使い分けを意識しましょう。
過度な煽りは逆効果(ブランド毀損のリスク)
■解説:売上を上げたい一心で、ユーザーを騙したり、過度な不安を煽ったりする手法は「ダークパターン」と呼ばれ、現代のWebマーケティングではタブーとされています。一時的にCVR(成約率)が上がっても、長期的には「あの会社は信用できない」というレッテルを貼られ、LTV(顧客生涯価値)が崩壊します。
■具体例:在庫が潤沢にあるのに「残り1点」と表示したり、ページを更新するたびにリセットされる「偽のカウントダウンタイマー」を設置したりするのは厳禁です。ユーザーはこうした手口に慣れており、嘘だとバレた瞬間に二度と戻ってきません。
■対策 :心理学は「価値を正しく伝える」ために使う事を心掛けましょう。嘘の演出ではなく、事実に基づいた演出を行う(本当に在庫が少ない時だけ表示する等)
ABテストで効果検証を行う
■解説:「ジャムの法則(選択肢を減らす)」は有名な仮説ですが、商材によっては「選択肢が多いほうが、選ぶ楽しさがあって購入率が上がる」というケースも存在します。心理学はあくまで「人間は一定の条件下でこう動く傾向がある」という仮説にすぎません。
■対策:最初から「これが正解だ」と決めつけず、ABテストを行いましょう。
・Aパターン:選択肢を3つに絞る(決定回避の法則)
・Bパターン:選択肢を10個見せる(現状維持)
このように比較し、実際のデータを元に判断することが、マーケティングの精度を高める唯一の方法です。
まとめ:行動心理学を理解してマーケティング施策をレベルアップさせよう

本記事では、マーケティングですぐに使える行動心理学の法則を15個紹介しました。
【信頼】ウィンザー効果やバンドワゴン効果で「安心感」を作る
【購入】アンカリング効果やおとり効果で「決断」を後押しする
【ファン化】返報性の原理や保有効果で「関係性」を深める
論理的な説明だけでは動かないユーザーも、感情や本能に訴えかけることで、驚くほどスムーズに行動してくれるようになります。
ただし、最後に触れたように「嘘」や「過度な煽り」は禁物です。お客様の背中を優しく押してあげるためのツールとして、これらの法則をWebサイトや広告施策に取り入れてみてください。
「自社の場合、どの心理効果を使えばいいかわからない」 「施策を実行するためのLP制作やデザイン修正を依頼したい」
そのようにお考えの方は、ぜひ一度、Webマーケティングと制作のプロフェッショナルである私たちGoFにご相談ください。貴社の課題に合わせた最適な心理学アプローチをご提案いたします。
快適な制作スケジュールと良質なマーケティング施策をお求めならば、まずはお気軽に株式会社GoFへご相談ください。
投稿者

藤岡 聡
元々オタク向けのフィギュアを製造したり、原型をOEMで他社に提供する会社(株式会社Questioners)を経営していたが、色々なエンタメ商材を取り扱っているうちに自分の仕事の本質がマーケティングにあることに気づき「株式会社GoF」を設立。現在はWeb制作からマーケティング全般をサービスとして提供。


